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解決事例のご紹介~交通事故~

交通事故において、兼業主婦の外貌醜状についての後遺障害を認め、17年間に及ぶ後遺障害逸失利益及び後遺障害慰謝料を認定し、解決金として570万円の支払いを得られた事例

交通事故における損害賠償請求に関する交渉として受任し、保険会社との交渉段階において治療費、通院交通費、入院雑費、休業損害、傷害慰謝料に関しては和解することが出来たものの、後遺障害については保険会社との間で争いとなりました。

そのため、交通事故によって発生した内側側副靭帯損傷及び外貌醜状について後遺障害に該当することを前提として後遺障害逸失利益、後遺症慰謝料等を請求する訴訟を提起し、上記後遺障害に関して医学文献や過去の裁判例を引用する等して詳細な主張を行いました。

裁判所としては、内側側副靭帯損傷については後遺障害として認定するとの判断は難しいとされましたが、外貌醜状については17年間に及ぶ後遺障害逸失利益及び後遺障害慰謝料解決金として570万円の和解案の提示があり、その金額で和解を成立させることが出来ました。

従前の裁判例においては、モデルなどの特に外見が重視される職業に限ってのみ外貌醜状の後遺障害逸失利益が認定され、それ以外の場合においては後遺症慰謝料としてのみ考慮されるにとどまっており、特に主婦業においては後遺障害逸失利益が比較的認められにくい傾向にありました。

しかしながら、本件のように兼業主婦における場合においても、実際に後遺症により生じている不利益につき事案に即した主張を行った結果、長期の後遺障害逸失利益が認定される場合もあり得ます。

もし、交通事故に遭われ、保険会社との交渉を行う中で何か疑問を感じられている方がおられましたら、軽くお話をしに来る感覚でぜひご相談にお越しください。

~依頼者の声~

弁護士を選ぶ時はどこに頼めば良いか悩んでしまうと思いますが、私は幸運にも知人から「一生懸命やってくれるよ」と助言をもらって弁護士法人奔流さんへとお願いすることとなりました。

一見難しいと思われる事も場合によっては覆す事もできるのでは?という希望を持つことができました。本当に頼んでよかったと思っています。

 

弁護士 陣内隆太(宗像オフィス)

 

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宗像の夏野菜

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いつもお世話になっている方から、宗像オフィスに庭で収穫された無農薬のミニトマトとゴーヤを頂きました。皆で分けたので写真は一部ですが、たくさん頂きました。

とても鮮やかな色で、見ているだけで、元気が出ました。この日の夕食にミニトマトはそのまま、ゴーヤはゴーヤチャンプルにしてもりもり食べて、身体の中から元気になった気がします。ゴーヤは生姜漬も好きです。

野菜の美味しさに目覚め自分でも野菜を育てたいと思いつつ早数年、、実家の家庭菜園の手伝いもままならない状況ですが、いつか実行したいです。

●土曜相談

宗像オフィスでは下記日時で土曜相談を実施いたします。

8/5(土)10時~16時

8/19(土)10時〜16時

前日までの事前電話予約制ですので、ご希望の方は宗像オフィスまでお問い合わせください。

その他の日程の休日相談をご希望の場合も、お問合せ下さい。

●遺言書作成セミナー

9/8(金)14時〜15時、河東コミセンの会議室にて行います。参加費500円です。ご参加を希望される方は電話で予約をお願いいたします。

(宗像・弁護士小出真実)

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海外へ

同居していた祖母は、亡くなるまで九州から出たことがなく、私が友人と天神(福岡市の繁華街)に遊びに行くのにもすごく心配するような人でした。

おばあちゃん子だった私は、祖母と同じように都会や海外は危険が多いと考えていましたし、祖母に余計な心配をかけたくない気持ちもあり、祖母が存命中は一度も海外に行ったことはありませんでした。

 

祖母が亡くなって数年後、友人から海外旅行に誘われました。それまでは全て断っていたのに、気が付いたら友人の誘いに乗っていました。保守的だった私が初海外の行き先にエジプトを選んだことは未だになぞです。

 

エジプトでは、苦手な虫が顔の周りに飛んできてもいつものように逃げ回るようなことはなく、虫を手ではらうという簡単な動作さえも億劫に感じるほど、40度を超える暑さは私の想像を絶するものでした。

旅行中は、暑さで常に頭はボーっとしていましたが、テレビや本でしか見たことがないスフィンクスやギザの三大ピラミッド、ルクソール等の世界遺産を目の前で見たときは本当に感動し、いろいろな国に行って、視野を広げたいと思いました。

 

1週間弱の旅行期間でしたが、体重が5kgも減っており、エジプトの暑さに改めて驚かされました。なかなかダイエットは成功しないのに、何もせずに痩せることができたので、コロナ禍ですっかり太ったことから、エジプト旅行を計画しようかと半分本気で思っています。

 

本部オフィス(福岡市東区)事務局I

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夏に思う

終戦の日やお盆があるからか、単に自分の年齢のせいなのか、ここ数年、なぜか夏になると先祖や家族のことなどについて深く考えることが多くなりました。

そのような中、極々私事で申し訳ないのですが、今夏、長く闘病していた身内が旅立ちました。

もちろん別れは悲しく寂しいものではありますが、息を引き取ったのを見届けた直後に思わず私の口から出たのは「すごいなー!」という感嘆の言葉でした。命を全うした、生ききった姿をまざまざと見せつけられた気がしたからです。心の底から感謝の気持ちが沸き上がりました。

そこで考えたのは、皆、両親から遡って先祖が繋いでくれたからこその今の命であるということです。今、あなたが、私がここに存在するということは、間違いなく先祖からの縁が続いているからです。そして世界中の、過去や現在進行形の戦争がなければ繋がっていたはずの命がどれだけあるのかということも考えます。過去から未来に向かって伸びている一人一本の道を強制的に断ち切る権利が誰にあろうか、それはその人の運命でも寿命でもないのだ、と今改めて声を大にして言いたいです。届け、と強く願いながら。

 宗像オフィス事務局S

 

*宗像オフィスでは休日相談を行っております。
日程は当ホームページのお知らせ・ニュース欄にてご案内しております。
事前電話予約制ですので、まずは宗像オフィスまでお問い合わせください。

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はじめまして、弁護士の陣内です

このたび、5月より弁護士法人奔流で勤務を開始いたしました陣内隆太(じんのうちりゅうた)と申します。

新しく福岡の地で生活を始めてまだ2週間ばかりですが、毎日の業務に悪戦苦闘しながらも新しい刺激と学びある日々に充実感を得ております。                                 これから、少しでも依頼者の方々に寄り添うことができるように精一杯精進して参りますので、ご指導ご鞭撻のほどよろしくお願いいたします。

少し私のことを紹介させていただきますと、学生時代から、旅行が趣味で家族や友人と様々なところに行っておりました。やはり、旅行の醍醐味は、まだ見たことのない景色や人々と出会うことができることです。

直近では、友人と新潟県の佐渡島を自転車で観光してきました。なかなかハードな旅ではありましたが、佐渡金山や北沢浮遊選鉱場跡などを実際に目にして、当時の佐渡島の賑わいや金の採掘に関わった人々の思いの一端に触れ、歴史を感じることのできる旅となりました。                                     また、佐渡島では、ホームページなどが公開されていない昔ながらの民宿に宿泊し、民宿の女将さんの温かい人柄に触れるとともに、佐渡島で獲れた魚介類や地元料理を堪能することができました。                               加えて、念願のトキも見ることができました。トキは、トキの森公園という佐渡島にある飼育施設でも見ることができるのですが、佐渡島には、なんと野生のトキが生息しています。必死に自転車を漕いでいる最中、田園から野生のトキが雄大に飛び立つさまを初めて目にしたときには言葉にできないほど心が震えました。

私は、生まれ育ったのが福岡の隣県である佐賀ということもあり、時折、福岡まで遊びに行くことはありましたが、住むのは今回が初めてです。福岡は、博多や天神などを中心とした繁華街もあれば、海や山といった自然も近くにあり、まだ住み始めて間もないですが、非常に暮らしやすい環境であることを実感しております。

福岡には、まだまだ行くことができていない場所が多くありますので、これから福岡の魅力的な場所をたくさん見つけていきたいと思っています。

弁護士 陣内隆太(本部オフィス 福岡市東区)

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誰も取り残されないコミュニケーション

当法人では年に1度、事業報告や法人内の課題を議論する法人総会を開催しています。コロナ禍によりオンラインでの開催が続いていましたが、今年度は3年ぶりに全職員が一堂に会して開催することができました。

今年度の課題として取り上げられたのは「コミュニケーション」です。
弁護士事務所に限らず、会社、学校、友人、家族など、あらゆるコミュニティを円滑・円満に運営するのに不可欠なのがコミュニケーションです。

コロナ禍となって、このコミュニケーションも変化しました。対面で相手の表情や声色を直接感じながらの会話は減り、メールやオンラインでのコミュニケーションが増えたことで隔地者間でのコミュニケーションがとりやすくなった反面、返答の遅滞化や伝え忘れをはじめとする課題も見えてきました。

さて、コミュニケーションっていったい何なんでしょうか。ググってみると「伝達」とか「伝える」という言葉が出てきますが、語源はラテン語のcommunicatio(コムニカチオ)、「分かち合うこと・共有すること」のようです。申込みがあり、これを承諾して初めて契約が成立するように、コミュニケーションも一方が相手に情報を「伝える」だけでは成立せず、情報をお互いが共有してはじめてコミュニケーションとなります。

今回の法人総会でテーマとして取り上げられたことで、私もコミュニケーションの在り方について考えてみました。私の考えとしては、「相手を知ること(知ろうとすること)、理解すること(理解しようとすること)」がコミュニケーションの第一歩ではないかなと思います。

ひとつの情報を伝えようとしても、相手によって受け取り方は異なります。相手がどんな人か、どんな性格か、何が好きか嫌いかなど、伝えたいことをどのように伝えたら相手に正確に伝わって共有できるのか、相手が言わんとしていることは何か、何故このタイミングなのかなど、結局のところ、お互いに相手が何を思い、何を考えているか、この表現方法で相手は何を思い何を考えるだろうか、を考えることが、よりよいコミュニケーションに不可欠なことではないかと思います。

私自身、忙しいと感じているときや機嫌があまりよくない時などは、つい相手のことを考えずに発信してしまうことがあります。これは自分のことしか考えずに発信してしまっており、分かち合うこと・共有することであるコミュニケーションとは呼べません。

心に余裕がないときこそ、「相手のことを考える」を忘れないように心がけたいなと思う今日この頃でした。

弁護士 松嶋健一(本部オフィス 福岡市東区)

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卒園式withコロナ

先日、子どもの通う保育園の卒園式がありました。

職員にも園児にもコロナウイルス陽性者が確認され、数名が登園自粛のまま、執り行われました。

担任の先生は、そのことに触れる発言の際に声を詰まらせていました。

 

思えばこの1年、コロナに振り回された1年でした。

運動会は無観客との通知が1か月前になされ、年長児だけは延期の上、人数限定での観戦へと縮小の上開催されました。他にも、感染者数の増加や陽性者の発覚により、行事を縮小・中止を余儀なくされることが相次ぎました。

園内の習い事も、緊急事態宣言に伴い人との接触を制限するために、当該期間は休止せざるをえず通常保育のみとなりました。

 

感染者数が落ち着いていた晩秋から年末までは、これまで縮小・中止をされた子どもたちの楽しみを取り戻すように、先生方が親子遠足やハロウィンパーティ、クリスマスパーティなど様々な企画を実行してくださいました。

 

この1年、先生方は、園から陽性者を出さないよう、広げないようにと緊張の毎日だったことと思います。毎日の清掃の頻度を増やし、ひとたび陽性者が出ると、先生方は、100個以上ある室内のおもちゃをひとつずつ洗い、子ども一人一人のロッカーや持ち物を細部に至るまで拭き上げ、消毒作業に余念がありませんでした。

おかげで、クラスターは発生せず、無事に卒園を迎えることができました。

 

先生方は、コロナウイルスが発生して以降、緊張の毎日の中難しい決断を迫られ、自身も悔しい思いをしながらも、子どもたちには深い愛情をかけてくださり、保護者にはどんな時も笑顔で明るい対応を常に徹底してくださいました。

卒園式も、withコロナの今を象徴するものとなりましたが、感染対策や陽性者確認時の対応、子どもたちに何とか楽しい時間を提供しようとするその姿勢に、先生方の愛情とプロ意識を一層感じた1年となりました。

 

生後6か月で通い始め、6年間過ごした保育園は子どもにとっては第2の家です。

その先生方には、尊敬と心からの感謝を申し上げます。

 

本部オフィス(福岡市東区)事務局S

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事務局研修会を行いました (身近な民法改正~時効と法定利率を中心に~)

先月(1月25日)、法人内において事務局研修会を行いました。今回は、2020(令和2)年4月1日に施行された改正民法の中で、特に大きく変わった時効と法定利率をテーマにとりあげました。

私は時効と聞くとまず、ケースごとに「●●の時から★年で時効」と丸覚えするイメージがありましたが、研修では基礎として時効の意味や、起算点の考え方、改正の経緯なども条文や事例を参照しながら学び、あらためて「なるほど」と思いながら理解を深めることができました。

また、法定利率が、国内の市場金利(超低金利時代)に応じる形で3%に引き下げられたという話については、「法律は私たちの身近にあって、ともに変動していくということなのだなぁ」と実感しました。

いずれもキーワードは「2020(令和2)年4月1日」ということで、同日以降に生じた出来事については、原則新しい民法が適用されることになりますが、例外もいくつかあるため、今後はその点も注目しながら事務作業を行いたいと思いました。

本部オフィス(福岡市東区)事務局K

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最新解決事例のご紹介~契約トラブル

特別養護老人ホームからの受け入れ拒否の適法性が問題となった事案について、裁判により、遺族らへの謝罪とともに140万円の解決金を支払うことで裁判上の和解が成立した事例をご報告します。
なお、過去の解決事例については、当ホームページにも掲載しています。

<事例分野>医療過誤・介護過誤
<解決年度>2021年
医療機関への短期入院を契機として施設(特別養護老人ホーム)が退院後の受け入れを拒否した事案。交渉中にご本人が他界したため、遺族において、退院後の在宅介護に要した介護費用や慰謝料等を求めて福岡地裁に提訴した。施設側はご本人の骨折リスク等を理由に受け入れ拒否の適法性等を主張したが、最終的に、裁判所の和解勧試に応じて、遺族らに遺憾の意を表明するとともに140万円の解決金を支払うことで裁判上の和解が成立した。


弁護士 池永修(本部オフィス、福岡市東区)

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原爆の火と熱の下で ~少女たちの被爆体験記2~


前回に引き続き、原子力のあり方、原爆の悲惨さ、平和の大切さについて考える機会となることを願い、学校法人純心女子学園及び著者の奥様であり著作権継承者の竹中誠子様にもご了解をいただき、被爆した同校の生徒らが当時遺した被爆体験記『新版 焼身/著者 高木俊朗』を、一部内容を抜粋してご紹介します。
                                        
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四年生の山下ツルは、工場のなかで、ピカーッと光った瞬間に、気を失って倒れた。気がつくとあたりが騒がしかった。級友が二、三人、ツルのまわりにいた。
「まあツルさんも生きている。いっしょにいかんね」ツルは起きようとしたが、からだが動かなかった。ツルは大きな梁の下になっていた。目のなかに血が流れこんで、見えにくかった。級友たちが梁を動かして、すきまを作り、ツルを引っ張りだした。ツルは立ち上がろうとしたが、腰から下がギリギリと痛んで動けなかった。
「ツルさん、立ちきるね。歩ききるね」「もう、うちは死んでもよかけん、あんたたち、早う逃げてくれんね」ツルは、もう、しかたがないとあきらめた。
「どうして、あんたばかり残して逃げていかれるもんね」級友はツルをかついで逃げたが、浦上川の岸まで出ると、力がつきた。級友たちも、服はちぎれ、どこかに負傷していた。ツルも苦しかった。ツルは、目の上が裂けて、押えても、血がとまらなかった。
「はよう、みんな、先に逃げて」級友たちは、ツルをかつぐ力はなかったので、先に行くことにした。級友もツルも、血と泥で汚れた顔に、いっぱいに涙を流した。
「ツルさん、がんばってね」
「みんなも気をつけて」ひとりになったツルは、もう、自分はここで死んでしまうのだと思った。ふと近くで、苦しそうな声がした。赤く、てらてらと光っている服を着ている人だと思って、よく見ると、皮膚のむけた人間の胴体であった。何も着ていない裸の男だった。ツルは、からだがふるえた。逃げよう としたが腰から下は、やはり動かなかった。見まわすと、工場の崩れた建物の上を、炎が渦まいているのが、夜の火事のように、あかあかと見えた。ツルは思わず、声をあげた。
「助けて、助けて」近くを通りかかる人にたのもうとして、一目見ただけで、ツルは悲鳴をあげた。煙と土ぼこりがいりまじって、渦をまいて吹き流れているなかに見えてくる、火ぶくれのような顔には、眉毛がなかった。別の人は、裸の胴体に幾すじにもなって血が流れていた。多くの人は、海草をぶらさげているように、ちぎれた服のぼろぎれを身につけていた。みんなが、長崎の港のある方角から、北の山の方に向かっていた。ツルは、何か大変なことがおこった、と思った。

ツルは、浦上川の岸まで逃げてきて動けなくなった。目の前の、崩れた工場の建物は炎に包まれていた。ツルは通りかかった男に助けを求めたが、男はそのまま行ってしまった。ツルルは恐ろしさと悲しさに、声をあげて泣いていた。
しばらくすると、肩をゆすられたので、ツルが顔をあげると、今しがた通りすぎて行ってしまった男が、
「しっかりするんだ」と、しゃがんで背中を向けた。ツルはうれしかった。ツルは背負われながら、「おじさん、ありがとうございます。ありがとうございます」と、礼をのべ、また、涙を流した。ツルが男の背中の上から見ると、火の手は、あたり一面にひろがっていた。もう少し、そこにいたら、火に焼かれるところであった。男も、ツルを背負ったまま、逃げ道に迷っていた。道路は、崩れた建物で埋められ、それが燃え上がっていた。
男は歩きだすと、浦上川のなかにはいり、ざぶざぶと渡った。向こう岸にあがると、田になっていて、道はなかった。男は、稲ののびた田のなかを、足をとられながら、横切って行った。ツルは、すまないと思って、「おじさんのお名前と、おところを教えてください。私が元気になったら、きっと、おたずねしますから」
その人は「よか、よか」というだけで、教えなかった。ツルは、それでも、くり返してたのんだ。その人は、怒ってでもいるように、だまったまま、歩いていた。ツルのからだが重いので、時どき休んでは歩いた。浦上は、どこを見ても、一軒残らず、家がたたきつぶされて、散らばり、かさなり合っていた。そこら中に火事がおこっていた。ツルは浦上の、小高い丘の方をさがした。見おぼえのある、塔と、屋根飾りと、壁などが、ひとつまみだけ、かけらのようになって立っていた。それが、浦上の天主堂だった。

ようやく、国鉄の線路に出ると、救援の列車が出るところであった。
ツルを背負った男は、負傷者をかきわけながら、「学徒隊の生徒だ。乗せてやってくれ」と叫んで、前に出て、ツルを乗降口に降した。別れるときに、その人はいった。
「私の名前なんか、あるもんね。それよりは、あんたがはよう元気になんなさい。それが一番のお礼だから」
ツルは列車のなかで、苦痛にたえながら、その人の服を、自分の血で汚してしまったことが、 いつまでも気になってならなかった。
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出典:『新版焼身 長崎の原爆・純女学徒隊の殉難』著者 高木俊朗 角川文庫

今年も76年目の8月9日を、日本は平和のうちに迎えることができました。
しかし、被爆した生徒らが遺した体験は、世界では薄れつつある記憶となっており、核に関し胸が痛む出来事もまだまだ山積しています。この記憶を絶やさず、先人たちが守り続けてきた平和を、日本だけではなく世界共通のものとできるよう、この事実を伝え続け、先人たちの思いを繋いでいくことが現代に生きるわたしたちの使命と思い、この本をご紹介させていただきました。

本ブログを掲載するにあたり、ご協力戴きました被爆校の学校法人純心女子学園、出版社の株式会社KADOKAWA及び著者の奥様であり、著作権継承者の竹中誠子様には心よりお礼申し上げますとともに、殉難された純女学徒隊及び教職員の方々のご冥福をお祈り申し上げます。

本部オフィス事務局S

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