先日、各地で公害問題に取り組む弁護団による水俣現地視察という企画に参加してきました。
水俣病に関するニュースで、昨年環境大臣が、水俣病被害者から話を聞く場において、わずか3分で、環境省が一方的にマイクをオフにするという暴挙は大きく取り上げられました。
そもそも水俣病とは、工場から排出されるメチル水銀に汚染された魚介類を人間が長期かつ大量に食べることで、手足のしびれや言語障害など様々な神経症状を引き起こす疾患であり、環境汚染による公害病です。
熊本県水俣市の現地視察では、水俣病の発生地ともいえる、まさに工場からメチル水銀を含む排水が、無処理のまま海へと排出されていた「百間排水口」や、不知火海が一望できる公園では、海を通して被害発生の広がった地域も確認することができました。また、水俣病資料館では、実際に水俣病被害者の方から、水俣病がどのように発生し、被害が拡大していったのか、特に水俣病が公式確認された後も数年に渡って十分な対策が取られず、被害が拡大していったなども理解することができました。
水俣病については、形式的には行政が水俣病患者と認定すれば補償が受けられる仕組みとなっていますが、その認定基準は大変厳しく、現在でも被害救済を求めて複数の裁判が起きています。近時の裁判例としては、2023年9月27日に原告全員を水俣病被害者と認めた大阪地裁判決、これに続く熊本地裁や新潟地裁判決などがでていますが、決して十分な救済には至っていません。
この問題について自分に何ができるのかはわかりませんが、今後も水俣病で苦しむ方が一人でも多く救済されるよう、公害問題は自分たちの社会の問題として、今後も注視していかなければならないと、多くのことを学ぶ機会となりました。
弁護士 池永真由美(本部オフィス)