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宗像オフィス

池永満弁護士のこと

12月は当法人を設立した池永満弁護士の命日の月です。

2012年に亡くなり、その翌年から命日にあわせて本部の先輩Sさんと先生に会いに行っています。
先生は今、遠くに福智山を望む眺めのとても良い霊園におられます。長く賑やかなところで過ごされた先生には少し静かなのではないかと当初思いましたが、先生ご自身が気に入って選んだ場所とのことですので、先に旅立たれたご両親らと一緒にゆっくりと眠っておられることだと思います。

私は、内定後、卒業までの半年近くを事務所で実務をしながら過ごしましたが、本当に世間知らずで恥ずかしいくらい無知な学生でしたので、先生から、あらゆることをゼロからご指導いただきました。それは社会人としての心構えから仕事に対する姿勢など全てです。そして先生が関わられた事件や多くの市民運動を通して世の中を知りました。

毎年のお墓参りは言葉少なめな私たちですが、そんな帰り路に考えることは、どうやっていただいたものを返していこうかということです。ご恩返しには、いくら時間があっても足りませんが、それでも自分たちに何ができるか、それは先生から学んだことを若い事務局に伝えていくことだろうと気持ちを新たにし、気を引き締めて仕事に取り組もうと思う、いつもより感傷的になる日、それが私たちの12月、お墓参りです。

宗像オフィス事務局S

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がんばらないで、にげてください

11月6日、福岡労働局が主催する過労死等防止対策推進シンポジウムに参加しました。私自身、受任事件として過労死に関する案件を受けたことはありませんが、労働災害案件を抱えていることもありますし、また、過労死等の問題は重大な社会問題でありますので、関心を持たざるを得ないところです。なお、過労死「等」には過労自殺が含まれます。

当日は、長年、過労死遺族の取材に尽力されてきた記者の方による基調講演と、実際に過労自殺によって家族を亡くされた方の講演、福岡過労死等を考える家族の会からのご報告という構成でした。

基調講演をいただいた記者の方からは、雇用労働問題を担当されてきたそのご経験から、数々の過労死等の案件をご紹介くださいました。労働者の過労死等の原因として、企業において、適正な労務管理を行う意識不足の問題があったり、中には長時間労働(長時間残業)の実態を隠蔽しようとした企業もあったりなど様々でした。2014年に過労死防止法が施行され、近年でも働き方改革が謳われている世の中において、まだまだ労働者の健康に配慮した組織としての体制は社会に浸透していない印象を受けました。

また、その記者の方は、アフターコロナの情勢における、労働者の働き方の問題点にも言及されました。日本労働組合総連合会の調査によれば、新型コロナウィルスの拡大により、テレワークを導入している企業が増加している中、「公私の区別がつきにくくなった」「長時間労働になった」という申告がしばしば見られるようになったとのことです。すなわち、テレワークにより、自宅など個人の私的空間で仕事を行うようになった結果、自律的に働くことができるようになった反面、一歩仕事のやり方を間違えてしまうと私的な時間までも仕事に費やしてしまう可能性があるようです。テレワーク中の労働者の労務管理をどのように行うべきなのか、企業は新しい難題に直面しています。

シンポジウムでは、お子さんを過労自殺によって亡くされた方のお話をうかがうこともできました。その亡くなった方は、社会人となって間もない若者で、入社してから約10か月後の過労自殺であったそうです。その方は責任感が強く、人一倍努力されているような方で、非常に心痛ましく感じられます。お話をうかがった方が絞り出した、「がんばらないで、にげてください」の言葉が強く印象に残っています。

多数の方々が出席しており、過労死等の問題は、少しずつではありますが社会の問題意識として取り上げられるようになってきたように思います。しかし、それでも、この問題が改善するまでには、まだまだ時間がかかるようにも思います。これ以上一人でも過労死等の被害者を出さないために何をすべきであるのか、考えるきっかけとなるシンポジウムでした。

弁護士 北中 茂(宗像オフィス)

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「赤間駅」130回目の誕生日

当法人宗像オフィスの最寄り駅はJR鹿児島本線赤間駅です(徒歩2分ほど)。

私も移動によく利用するとても身近な駅です。駅構内には立ち食いうどんのコーナーもあります。

その赤間駅が去る9月28日に130回目のお誕生日を迎えたそうです。

明治22年12月11日、九州初の鉄道が開通し、翌年の9月28日に宗像市内初の駅となる赤間駅と博多駅間が開通したそうです。当時、同区間内の駅は、箱崎・香椎・古賀・福間で、今年の誕生日には、赤間駅と併せて5駅で開業130周年記念乗車券が発売されました。赤間駅でも朝早くから発売を待つ鉄道ファンの姿が見られました。

私は、いつも利用者に大きな声で挨拶や声掛けをし、ホームや駅構内を掃除されている方が、今回の取り組みの発案者である赤間駅の駅長さんだということを初めて知りました。(親しみやすさから、失礼ながらそんなに偉い方とは思っておらず。)

日常利用している赤間駅が、明治時代から地域の公共交通の要としての役割を果たしており、その駅の歴史がそのまま宗像市の歴史に繋がっているのだなと、大層賑わったであろう当時の赤間駅に思いを馳せながら考えました。

 

ところで、ナゼ130年記念なのか?ですが、、世界遺産「神宿る島」宗像・沖ノ島と関連遺産群がある宗像市に所在する赤間駅も広い意味で『世界130(イサンハ)みんなの宝』だからだそうです・・。

 

宗像オフィス事務局S

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芸術の秋

奔流にはブラスバンド部があります。

部員は5名。特に披露することを目標とせず、月に1、2回集まって気ままに練習しています(ついつい話が弾み、最後の数十分でようやく音出しを始めることもしばしば)。

私は中学高校で打楽器を担当していましたが、今回初めてサックスに挑戦することにしました。指遣いを覚えるだけで精一杯で、その時覚えても来月には全て忘れ、また振り出しに戻る。そんなことを繰り返し、1年ほど経ちます。ほぼほぼ私が原因ですが、まだ1曲も完成していません。

月に1、2回の練習が、私の毎月の楽しみだったのですが、今年はコロナで集合練習はストップしています。

みんなで集まったときに気持ちよく合わせられるよう、今は個人練習に励みたいと思います。そして、来年こそは1曲完成させたいです。

宗像オフィス事務局M

(昨年の練習風景)

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8/8「種苗法改定から見える食と農の危険性」勉強会のご案内

※8月8日の勉強会はコロナ感染拡大防止のため中止となりました。また開催となった際にはお知らせいたします。

 

皆さんは、「種苗法」という法律を、ご存じでしょうか。

「種苗法」は、農産物や園芸植物の特許制度と、たねや苗の流通ルールを定めた法律です。私も含めて農業関係者でない一般の人にはなじみがなく、知らない方も多くいらっしゃるかと思います。

この種苗法の改定案が、コロナ禍の通常国会で提出されたものの、強行採決が見送りとなり、継続審議となっています。

種苗法の改定案は、これまで農家に認めていた種苗の自家採種を原則禁止にするという(=自分の畑でとれた種を翌年使ってはいけない)大きな方針転換を伴う改定案で、これまで複数の自治体の議会において、種苗法改定に反対の意見書を国へ提出するよう求めた請願も採択されています。

種苗法の改定によって、私たちの食の安全安心が脅かされるのではないか、そう危惧された福津市民の方と福津市議の方が中心となって福津市内で種苗法改定の学習会を開催されています。

その第2回の学習会に講師として参加をさせていただくことになりました。詳細は以下のとおりです。

日 時  8月8日(土) 10時~12時(開場9時50分)

場 所  福津市中央公民館研修室1(2F) 福津市手光2222

参加費  300円(会場費として)

内 容  種苗法改定から見える食と農の危険性~こどもの健康と未来を守るために~

 

私からは、種苗法の改定の内容とその背景、先立つ種子法の廃止などについて簡単にお話をさせていただく予定です。

「食の安全安心」には詳しくないのでそのあたりのお話はできないのですが、学校給食の残留農薬について検査を実施しその改善のために教育委員会との話し合いをすすめている農事組合の方やその他参加者の方より、食の安全安心という観点からお話をいただけるそうです。

 

当日は、参加者の方と一緒に食の安全安心、子どもたちに残したい日本の農業や農産物について考える機会にしたいと思います!コロナ対策もされているそうなので、関心、興味をお持ちの方はお気軽にご参加ください。

 

弁護士 小出真実(宗像オフィス)

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様々な角度から多重債務問題に切り込む~多重債務相談に関する全国協議会から~連載③運動編

(本ブログ3/25,4/1付けのつづきです)
本ブログでは,協議会の中から市民の皆さんにも関連ある一部をご紹介しています。
今回は,生活困窮の方や女性への支援など,運動編(最終回)です。

生活困窮者の自立支援事業における弁護士会の役割
次に,日弁連や弁護士会における生活困窮者に対する支援制度について報告されました。生活の困窮は,労働問題・家庭問題・自殺問題などの社会的な問題に関連するため,注意深い対応が必要とされています。
生活困窮者による相談の特徴として,法的・法的以外の問題を含めて複合的な悩みを抱えていることが多いことが指摘されます。すなわち,本人では具体的に何に困っているのか把握することができていないのですが,とにかくいろいろなことで困っているため,これまでどこへ相談に行けばよいかも分からない方が多数存在していました。そのため,法的な問題を解決するのみでは生活を再建することができない場合が多く,行政その他の機関との連携が不可欠であると言えます。
そこで,日弁連は,毎年貧困問題に関する協議会を開催して,生活困窮者の生活再建に係る問題に取り組み,各弁護士会に対して自治体との連携を呼び掛けています。その上で,各地の弁護士会は各地の実情に応じた取り組みを行っています。例えば,法テラスの司法ソーシャルワークと連携して福祉事務所で法律相談を実施したり,自治体からの要請に応えて支援調整会議に弁護士が参加したりする取り組みが行われています。


多重債務問題を抱える女性への支援
次に,多重債務問題について,女性への支援に重点をおいた司法とソーシャルワークについて報告されました。
多重債務に陥ってしまう原因は様々ですが,その中でも法的な観点からの支援だけでなく福祉的な観点からの支援も必要とする類型も様々存在します。例えば,DVや虐待被害の一環として本人名義で借入れを行ってしまったり,特に診断を受けてはいないが軽度の知的障害や学習障害を有し金銭管理が不得手であったりする場合があります。
こういった方についての多重債務問題については,人生のある時点における債務の整理だけでは,多重債務に陥った根本的な問題を解決することにはなりません。福祉的な観点を持ちながらそう言った方々に向き合って,司法のスタンスと福祉のスタンスの違いを理解することが必要となってきます。債務整理の相談を契機に福祉的な介入につなげることはDVや虐待の予防にもなり得ることを共通認識として広げるべきとの意見が出されました。
また,地域によっては,風俗店で働く女性の法律相談を実施して,その就労支援,障害者手帳の取得,生活保護の案内,摂食障害等の対応に強いクリニックや自助グループの紹介に取り込んでいる地域も存在します。名古屋の風テラスが名古屋市の仕事・暮らし自立サポートセンターと連携して,そのような活動を行っています。

最後に
このように,今回の協議会においても,近時の法改正・社会情勢に注目しながら,様々な角度から多重債務問題に切り込み,それをどのように解決することが相談者の抱える問題を解消することになるのかについて充実した意見交換が行われました。このような全国的な協議会に参加すると,全国各地の弁護士一人一人が同じ信念をもって知恵を絞りながら共通の課題に取り組んでいることが感じられます。さらなる議論を重ねていき,改めて,多重債務問題の根絶につながるよう日々奮闘していきたいとの思いを強くしたものでありました。
(おわり)

弁護士 北中 茂(宗像オフィス)

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様々な角度から多重債務問題に切り込む~多重債務相談に関する全国協議会から~連載②社会編

(本ブログ3/25付けのつづきです)
本ブログでは,協議会の中から市民の皆さんにも関連ある一部をご紹介しています。
今回は,ヤミ金やカジノ等,社会問題についてです。

ヤミ金から借入れをした人等の口座凍結問題
次に,ヤミ金からの借入れに利用された口座や振り込め詐欺に利用された口座が凍結されることに関する問題点について報告されました。そういった口座は凍結されてしまうことがあるのですが,警察庁から全国銀行協会に提供されている凍結口座名義人リストに登載されると,実際に犯罪に利用された口座だけでなく,その人のもつ全ての口座が金融機関によって凍結されてしまうことがあります。しかし,かかる金融機関の処置は誤解に基づく場合がありますので,そのような人からの相談を受けた際には注意して対応する必要があります。
犯罪利用預金口座等に係る資金による被害回復分配金の支払等に関する法律によると,金融機関が口座凍結の処置を採るのは,「当該金融機関の預金口座等について」犯罪利用預金口座等である疑いがあると認められる場合とされています(同法3条1項)。すなわち,口座凍結されることが法律上定められているのは,犯罪に利用された「当該」口座だけであって,その人の全ての口座が凍結されるわけではありませんし,その人が新規の口座をつくることは妨げられないこととなります。
しかし,金融機関の担当者の中には,犯罪に利用された口座をもっている人の一切の口座利用を認めないという不正確な理解に基づく処置をされることがあります。このような場合には,代理人弁護士としては,口座をもつことができないといった重大な不利益を回避するべく,上記の法律上の根拠を示したうえで,犯罪に利用されたわけではない口座凍結の解除や新規口座の開設を金融機関に対して求めていく必要があります。

カジノ問題の現状と課題
次に,2016年12月に統合型リゾート(IR)整備推進法案,通称「カジノ法案」が成立したことに関して,カジノ問題の現状について報告されました。
同法に基づくカジノには,民設・民営であること,ショッピングモールやレストランなどを一区画に含んだ複合観光集客施設であることといった特徴が挙げられます。カジノを設立することで,莫大な経済効果,雇用機会の増加といったメリットが存在します。
他方で,カジノを設立することによる様々な問題点も指摘されています。例えば,青少年の健全な育成の妨げとなること,カジノ利用者はヤミ金業者の標的となり得ること,カジノ利用者のギャンブル依存を引き起こしかねないことなどといったデメリットが存在します。そのような指摘もあるため,自治体によるカジノ誘致に対する反対運動が展開されています。各地の自治体には,このようなデメリットが社会問題・消費者問題になりかねないことを認識したうえで,カジノ誘致に取り組むことが求められています。
(次回へつづく)

 弁護士 北中 茂(宗像オフィス)

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様々な角度から多重債務問題に切り込む~多重債務相談に関する全国協議会から~連載①手続編

本年1月,東京弁護士会館にて「多重債務相談に関する全国協議会」が開催され,私は,福岡県弁護士会の生存権擁護・支援対策本部の委員としての立場から出席しました。
全国の弁護士会からも多数の出席があり,多重債務相談に関連する7つの協議事項について報告・意見交換が行われました。
本ブログでは,協議会の中から市民の皆さんにも関連ある一部をご紹介します。
今回は、破産または行政手続上の諸課題についてです。

同時廃止手続と破産管財手続の振り分け基準
破産申立後は,手続上,同時廃止か,管財手続(異時廃止)が採られます。
協議会では,同時廃止手続が採られるのか,破産管財手続が採られるのか,その全国的な振り分け基準について報告されました。
従前は,各地ごとに振り分け基準が異なっていましたが,全国の裁判所で均一な司法サービスが提供されるべきとの要請から振り分け基準の統一化が進められてきました。
現在はほとんど全ての裁判所において振り分け基準が統一されていますが,その運用については各地で多少の差異はあるようです。例えば,統一された基準によれば,申立て直前の財産の現金化(定期預金の解約,生命保険の解約等)はその金額が過度に高額でなければ考慮せず現金として取り扱うこととされていますが,どの程度の金額をもって「過度」となるのかについては各地で温度差があるようです。振り分け基準の統一化が図られる中,申立代理人は,各地での基準の運用の仕方に配慮しながら同時廃止手続が採られるように申立て行っている状況です。
さらに,近時の裁判手続のIT化の流れの中で,破産手続開始申立手続においてもオンライン申立ての方法に適しているのではないかとの意見も出されていました。これが実現すれば申立書式を含めた運用の完全統一が図られる可能性も十分にあるのではないでしょうか。

生活保護法63条返還債権の財団債権・非免責債権化
2018年生活保護法改正に関し,いわゆる63条返還金を国税徴収の例による債権とし(改正法77条の2),保護費との相殺を可能にした(改正法78条の2)ことについて,以下の各場面に応じて被保護者の代理人としてどのように対応すべきか報告されました。
例えば,保護の実施機関の責めに帰すべき事由によって保護金品を交付すべきでないにもかかわらず,その交付が行われたという過誤払いがあった場合(生活保護法施行規則22条の3)には,被保護者が返還しなければならないことには変わりはありませんが,被保護者の代理人としては,保護の実施機関の職員に対する損害賠償請求権の成否やこれを前提とした当該職員による過支給費用の全部又は一部の負担の可否について検討しておく必要があります(東京地裁平成29年2月1日判決参照)。
また,63条返還債権を根拠に被保護者の財産が差し押さえられることがある場合には,法律上,保護受給権だけでなく,既に給与を受けた保護金品も差押えが禁止されています(生活保護法58条)ので,被保護者の代理人としては,その差押えの違法を主張する必要があります。
また,保護の実施機関からの徴収(滞納処分の執行)によって被保護者の生活を著しく困窮させるおそれがある場合には,滞納処分の執行を停止することができるとされています(国税徴収法153条1項2号)。そして,国税徴収法の基本通達によると,「生活を著しく窮迫させるおそれがあるとき」とは,滞納者の財産につき滞納処分の執行等をすることにより、滞納者が生活保護法の適用を受けなければ生活を維持できない程度の状態(国税徴収法76条1項4号に規定する金額で営まれる生活の程度)になるおそれのある場合をいうとされていますので,被保護者の代理人としては,その滞納処分の停止を求めることを検討する必要があります。なお,同じく国税徴収法の基本通達によると,滞納処分の停止がなされた場合,その処分が取り消されないで,滞納処分の停止をした日の翌日から起算して3年を経過したときは,その滞納処分の停止をした国税を納付する義務は当然に消滅する(国税徴収法第153条第4項)とされていることにも留意しておく必要があります。
また,保護の実施機関によって保護費との相殺が行われることがありますが,それは,一定の場合に制限されていますので,被保護者の代理人としては,そのような相殺が法律上許されるものであるのかどうか検討する必要があります。具体的には,生活保護利用者からの徴収金の納入に充てる旨の申し出があった場合や,生活保護利用者の生活の維持に支障がないと認められる場合でなければ,保護費との相殺は認められないことに留意しなければなりません。
このように,63条返還債権に関連する各場面に応じて,被保護者の代理人として採るべき手段について報告がなされ,今後,具体的な代理人活動においてイメージを持つことができました。
 (次回へつづく)

 弁護士 北中 茂(宗像オフィス)

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事務所会議とランチ会

当法人の各オフィスでは月に1回~2回、所内会議を開いております。
その会議では法人会議の報告や事件の進捗確認、運営のことなどを1時間から2時間かけて話し合います。

宗像オフィスでは、ここ数回は、お昼時にお弁当を食べながら実施しており、2月の会議では日常業務の中でヒヤリとしたこと、ハッとしたことなどを報告し検討しました。

もちろんヒヤリもハッとも無いよう努めていますが、小さなことでも共有することで自身の業務を振り返ることができ、問題点を整理し、気づかない解決・改善・防止策のアドバイスを相互に行うことができます。
美味しいお弁当をいただきながら、とても有意義な会議になりました。

その会議とは別に、本部の花田弘美弁護士が宗像に来たタイミングに合わせて、お昼にランチに行きました。場所はほぼ1年ぶりの「シェ・ささ原」さんです。

美味しいランチをゆっくりといただきながら、事務局は、普段なかなか顔を合わせる機会のない花田弁護士に修習地のことや紅茶好きという花田弁護士の紅茶への思いなどを聞き、親交を深めることができたと思います。

写真は日替わりランチのメインとデザート、パスタランチのメインです。美味しいフレンチを気軽に楽しめます。夜はワインの種類も充実しているようです。JR赤間駅南口近く。お勧めです!

宗像オフィス事務局S

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「どこまできてる?日本の監視社会」~1/25九州アドボカシーセミナー開催のご報告

1月25日、NPO法人九州アドボカシーセンターの企画で、武藤赳明弁護士(日弁連・情報問題対策委員会副委員長、姪浜法律事務所)を講師にお招きし、「どこまできてる?日本の監視社会」というタイトルでお話を伺いました。

武藤弁護士はこれまで住基ネット訴訟やグーグルストリートビュー違憲訴訟において弁護団の中心としてプライバシー保護問題に取り組まれるとともに、日本弁護士連合会の委員の一員として継続的に監視カメラや顔認証システムの問題にも取り組まれ、ドイツなど諸外国へも調査に出向かれているなど、その分野の第一人者として新聞などのメディアの取材を受けられています。
まず、EUや諸外国では、プライバシー保護の問題として現在顔認証システムの限界が議論されているところ、日本ではようやくターゲティング広告が注目されるようになり、これからマイナンバーカードが推進されているような段階で、日本の問題意識や諸制度は諸外国よりもかなり遅れているという現状を紹介され、それは私たち市民がIT問題をよく理解していないことが原因と指摘されました。
情報流出という点に関しては、情報管理の不備で世界各地の監視カメラの映像がリアルタイムにインターネット上で閲覧できるようになってる外国のサイトをご紹介いただき(もちろん日本の監視カメラ映像も複数ありました)、適切な情報管理ができていないと情報が世界中に流出してしまう怖さを実感することができました。
そのような中、警察の捜査では顔認証システムが徐々に使用されるようになっていて、昨年10月東京の渋谷センター街で発生した軽トラック横転事件の被疑者特定には顔認証の手法が使われるなど、社会の監視化はすすんでいるとのことでした。
政府がすすめるマイナンバー制度についても、世界では、顔認証が主流になっているのに対して時代遅れで、無駄な事業ではないか、よく分からないまま進められているのではないかとも批判されていました。
最近政府が「プライバシー」や「個人情報」を盾に国民に重要な情報を公開しない姿勢については、民主主義国家はまずは情報の透明性を確保するのが原則であると言及されました。
EUではプライバシー保護に手厚く、原則として生体情報の収集、プロファイリング規制を禁止していることなどを紹介され、その根底には過去の国家的過ちに対する反省があり基本的人権を徹底的に擁護する立場がとられているとのことでした。

私自身もITに疎く、その仕組みが分からないままcookieやクラウドなどを使っていましたし、お話を伺う前は「監視社会」という言葉もピンときていませんでした。まさに武藤弁護士がおっしゃる「わからないから議論もできない」、思考停止状態に陥っていたことを反省しました。
武藤弁護士のお話を聞いて技術の発展とともに新たな監視化がすすんでいるということがよくわかり、民主主義国家を守るために情報流出、プライバシーの問題について学び、真剣に考え、便利さの反面社会全体としてどこまでが許容範囲で快適に過ごせるかを議論しないといけないとの思いを強くしました。

弁護士 小出真実(宗像オフィス)

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