先日、市民団体主催のヘイトスピーチ勉強会に参加しました。同勉強会では3名の講師が登壇し、ヘイトスピーチの定義や発生原因、法規制などの対応策について、それぞれの視点から講演が行われました。
まず、ヘイトスピーチの定義についてです。これは特定の民族や国籍の地の人々に対して危害を加える言動や、著しく見下す内容だけを指すのではありません。特定の専門や国籍に属する人々を、合理的理由なく一律に排除・排斥するよう「扇動(煽り立てる)すること」も含まれます。特にこの「扇動」は、単なる個人の意見にとどまらず、不特定多数を巻き込んで攻撃を拡大・正当化させてしまう危険性が指摘されました。
法規制に関しては、2016年に「ヘイトスピーチ解消法」が制定され、不当な差別的言動は許されないと宣言されました。これにより表立った差別表現は減少したものの、同法には罰則規定がないという問題点もあります。また最近では、直接的な表現を避け、根拠が不十分なまま「外国人が不当に優遇されている」などと差別を正当化するような主張、いわゆる「現代的レイシズム」の表現が増えています。一見すると不平等への批判のようですが、実態はヘイトスピーチであることも多いとのことでした。
ヘイトスピーチへの対策として、国の法律の制定以降、複数の自治体で独自の条例が作られてきました。2019年には、「川崎市差別のない人権尊重のまちづくり条例」が可決され、2020年にはヘイトスピーチに対する罰則が制定され施行されています。なお、もちろん刑法上の名誉毀損罪に該当したり、民事上損害賠償請求の対象にもなることがあります。
今回の勉強会で最も深く考えさせられたのは、こうした「外国人優遇」に対する根拠なき主張は、やがて性的少数者、高齢者、経済的弱者などへの批判へと繋がり、社会の深刻な分断を招きかねないという点です。ヘイトスピーチを単なる一部の問題として捉えるのではなく、自分たちの社会全体が抱える課題として、一人ひとりが向き合う必要があると改めて強く認識しました。
弁護士 池永真由美(本部オフィス)

