会社から解雇を言い渡されたものの、事実上解雇が無効であることを前提とした解決が実現した事例ご紹介いたします。
正社員であった依頼者の方が、経営者から厳しい叱責を原因として医療機関を受診し休職を勧められたため休職をしました。すると、休職開始から1か月後に休職前の勤務態度が不良であったなどとして解雇を言い渡されたため、会社を相手方として、解雇無効を主張し、解雇言い渡し以降の未払い賃金及びパワーハラスメントを理由とした慰謝料を請求しました。
普通解雇事由がないこと、解雇に合理性相当性がないことをこれまでの業務実態等を詳細に立証するとともに、休職することがやむを得なかったことの合理的根拠を立証した結果、解雇言い渡しから解決(訴訟上の和解)までの期間における給与及び早期解決を目的とした上乗せ額を解決金とする旨の和解にて解決しました。パワーハラスメントに関しては、証拠が乏しかったため、裁判官からは慰謝料を認める旨の心証開示はありませんでしたが、早期解決を目的とした上乗せ額を解決金と認めさせたことで、事実上、解雇無効以上の解決金を得ることができました。
会社によっては、休職の期間を就業規則によって定めておりますが、その期間を経過する前に解雇を言い渡してくることもあります。休職期間中における解雇は、解雇以外の方法(配置転換など)を検討する必要があるなど裁判例上では、通常の解雇よりもハードルが高くなっています。また、労災を原因とした休職期間中においては解雇できないことが労働基準法19条に明記されています。
就業規則には、解雇事由として抽象的なことしか定めていない場合が多くありますので、解雇を言い渡された場合や解雇を口実に自主退職を求められた場合には、即決することなく、専門家へご相談いただくことをお勧めします。
弁護士 坂口裕亮







