久しぶりの相談室だよりをお届けします。
多重債務については、コロナ禍以降、物価上昇等の影響もあってか、相談が増加している印象です。統計的にも借入額の増加、破産申立件数の増加が表れています。今後、金利上昇に伴い、さらなる家計の悪化も懸念されます。
今回のご紹介は、家計悪化による多重債務とはちょっと異なる事案です。
相談内容…28歳、派遣会社勤務で毎月の収入は手取り18万円ほどです。
3年前、同僚に誘われて初めてパチンコに行き、1000円が1時間足らずで20万円に増えたことに味をしめ、パチンコにのめりこんでしまいました。仕事の時間以外はパチンコ店にいる生活となり、パチンコに行くためにお金を借りる、パチンコで負けて生活費がなくなりお金を借りる、借金の返済のためにお金を借りるようになり、借入先も気付けば1社、2社、3社…とどんどん増えていき、3年で借金が約500万円になってしまい、もう借入先もなく、借りてる先からは督促状が届いています。ギャンブルが理由での借金は破産できないと聞いたことがあるのですが、どうしたらよいでしょうか…。
破産は自身の負債の責任を免れさせる(法的に支払義務を免除する)制度ですが、いかなる理由の借金でも免責が認められるものではなく、破産法252条1項には免責不許可事由が列挙されています。
パチンコなどのギャンブルが理由での借金の場合は、「浪費又は賭博その他の射幸行為をしたことによって著しく財産を減少させ、又は過大な債務を負担したこと。」(破産法252条1項4号)に該当する可能性があります。
もっとも、免責不許可事由に該当する場合には免責が絶対に認められないというわけではありません。
破産は、債務者について経済生活の再生の機会の確保を図ることを目的とする制度であり、ギャンブルを理由とする借金をはじめとする免責不許可事由に該当する場合には、借金の理由について債務者自身に著しい責任がある(借金してまでパチンコしなければよかっただけ。病気で働けず生活費がなく、やむにやまれず借金をした場合とは大きく異なります。)ため、原則として免責は認められず、ただし、破産するに至った経緯その他一切の事情を考慮して免責を許可することが相当であると認めるときは、免責許可の決定をすることができるとして、裁量免責を認めています(破産法252条2項)。
したがって、ギャンブルが理由での借金であっても、これからの行動次第で、免責が認められる可能性は十分にあります。
ギャンブルで借金をしたことは変えられない事実ですので、①今後ギャンブルをしないことは当然ですが、②なぜ借金をしてまでギャンブルをしてしまったのか、なぜ途中でやめられずに続けてしまっていたのか等の当時の振り返りと反省を示すこと(ギャンブル依存症向けの医療機関の受診や支援団体へ相談することも①を裏づける行動のひとつです。)、③現在は自身の収入の範囲内で問題なく生活できていることetc・・・を詳細に示すことが、裁量免責を認めてもらうために必要となります。
なお、免責不許可事由に該当する場合の破産申立の場合、裁判所により破産管財人が選任され、破産管財人が第三者の立場として、債務者に免責不許可事由があるか、あるとした場合裁量免責を認めてよいか等の調査が行われることが多く、その場合、裁判所に予納金(福岡地裁では最低20万円~)を納める必要があります。
ギャンブルに限らず、クレジットカードで高価な買い物をしてしまった、オンラインゲームに熱くなって課金し続けた等で借金の返済が出来なくなった方でも、これからの行動によっては免責が認められる可能性は残されていますので、まずはお気軽にご相談ください。
次回は、「受任通知で督促とまってもう安心…?」(仮)
弁護士 松嶋健一(粕屋オフィス)


